歯並びが悪くなるクセ|指しゃぶり・口呼吸
はじめに
美しい歯並びは、見た目の印象だけでなく、咀嚼機能や発音、全身の健康にも大きく影響します。歯並びが悪くなる原因には遺伝的要素もありますが、実は日常の何気ないクセや習慣が大きく関係しています。特に成長期の子どもにとって、指しゃぶりや口呼吸といった習慣は、歯並びや顎の発育に深刻な影響を及ぼす可能性があります。本記事では、歯並びを悪くする代表的なクセである指しゃぶりと口呼吸について、そのメカニズムや影響、改善方法を詳しく解説します。
歯並びが悪くなるメカニズム
歯並びは、遺伝的な要因だけでなく、環境的な要因によっても大きく左右されます。特に成長期の子どもの場合、顎の骨はまだ柔らかく発育途中であるため、日常的な力の加わり方によって容易に変形してしまいます。
歯は常に動き続けており、唇や舌、頬の筋肉からの圧力と、歯を支える骨との力のバランスで位置が決まります。このバランスが崩れると、歯は本来あるべき位置からずれていきます。指しゃぶりや口呼吸といったクセは、このバランスを崩す大きな要因となるのです。
また、正常な顎の発育には、適切な筋肉の使い方と刺激が必要です。悪いクセによって筋肉の使い方が偏ると、顎の成長にも悪影響が及び、結果として歯並びが悪くなります。
指しゃぶりが歯並びに与える影響
指しゃぶりは乳幼児期によく見られる行動で、多くの子どもが経験します。生後2歳頃までの指しゃぶりは発達の一過程として自然なものですが、3歳を過ぎても続く場合は注意が必要です。
指しゃぶりを長期間続けると、指の圧力が常に前歯にかかるため、上の前歯が前方に突出し、下の前歯が内側に倒れ込む「出っ歯」の状態になります。さらに、指を吸う動作によって口の中が陰圧になり、頬の筋肉からの圧力が強まることで、上顎の歯列が狭くなり、V字型に変形してしまいます。
また、指しゃぶりをしているときは上下の前歯の間に指が挟まっているため、奥歯で噛んでも前歯が噛み合わない「開咬」という状態になります。開咬になると、食べ物を前歯で噛み切ることができず、発音にも影響が出ます。特にサ行やタ行の発音が不明瞭になることがあります。
指しゃぶりの影響は、吸う指や吸い方によっても異なります。親指を吸う場合が最も多く、上顎への影響が大きくなります。永久歯が生え始める6歳頃になっても指しゃぶりが続いていると、永久歯の歯並びにも影響が及びます。ただし、3歳頃までに指しゃぶりをやめれば、多くの場合、成長とともに歯並びは自然に改善していきます。
口呼吸が歯並びに与える影響
口呼吸は、指しゃぶり以上に歯並びに深刻な影響を及ぼす可能性があるクセです。本来、人間は鼻で呼吸するように設計されていますが、さまざまな理由で口呼吸が習慣化してしまうことがあります。
口呼吸をしていると、常に口が開いた状態になるため、舌の位置が正常な位置(上顎に軽く触れている状態)より下がります。舌は本来、上顎を内側から押し広げる役割を担っていますが、舌の位置が下がることでこの機能が失われ、上顎が狭くなってしまいます。
また、口が開いていると頬の筋肉が歯列に加わる圧力が強くなり、歯列がさらに狭くなります。その結果、歯が並ぶスペースが不足し、歯が重なり合ったり、八重歯になったりします。
口呼吸によって顔の筋肉の使い方も変わります。口を閉じる筋肉が弱くなり、顔全体が縦に長く伸びた「アデノイド顔貌」と呼ばれる特徴的な顔つきになることがあります。具体的には、面長で顎が小さく、ぼんやりした表情に見えるという特徴があります。
さらに、口呼吸は口の中を乾燥させるため、唾液による自浄作用が低下し、虫歯や歯周病のリスクも高まります。睡眠時の口呼吸は、いびきや睡眠時無呼吸症候群の原因となり、睡眠の質が低下します。子どもの場合、睡眠不足は成長や学習能力にも影響を及ぼします。
口呼吸の原因
口呼吸が習慣化する原因はいくつかあります。
最も多いのが鼻の問題です。アレルギー性鼻炎や副鼻腔炎、鼻中隔湾曲症などで鼻が詰まっていると、自然と口で呼吸するようになります。また、扁桃腺やアデノイドが肥大している場合も、気道が狭くなって口呼吸になりやすくなります。
単なるクセとして定着してしまっている場合もあります。風邪などで一時的に鼻が詰まった際に口呼吸をし、それがクセになってしまうことがあります。
舌の筋力が弱い場合も口呼吸になりやすくなります。舌を正常な位置に保つには、ある程度の筋力が必要です。筋力が不足していると、舌が下がり、口が開きやすくなります。
指しゃぶりをやめさせる方法
指しゃぶりは、3歳頃までであれば自然に卒業することが多いですが、それ以降も続く場合は積極的な介入が必要になります。
まず大切なのは、無理にやめさせようとしないことです。叱ったり、手に苦い薬を塗ったりするような強制的な方法は、子どもにストレスを与え、かえって指しゃぶりが増える可能性があります。
指しゃぶりは、不安や退屈、眠気などを紛らわせる手段として行われることが多いため、まずはその原因を見つけることが重要です。日中、子どもとしっかりコミュニケーションを取り、遊びや活動で手を使う時間を増やすことで、自然と指しゃぶりの時間が減っていきます。
寝る前の指しゃぶりについては、入眠儀式を変えることが効果的です。絵本を読んであげる、手を握ってあげるなど、別の安心できる方法を提供しましょう。
子どもが指しゃぶりをやめようとする気持ちを持つことが最も重要です。本人と話し合い、やめるメリットを説明し、一緒に頑張ろうという姿勢を示します。カレンダーに指しゃぶりをしなかった日にシールを貼るなど、視覚的に進捗が分かる方法も効果的です。
4歳を過ぎても指しゃぶりが続く場合や、すでに歯並びへの影響が見られる場合は、小児歯科や矯正歯科に相談することをおすすめします。
口呼吸を改善する方法
口呼吸の改善には、まず原因を特定することが重要です。鼻の問題がある場合は、耳鼻咽喉科で適切な治療を受ける必要があります。アレルギー性鼻炎や副鼻腔炎の治療、扁桃腺やアデノイドの摘出手術などが必要になることもあります。
鼻呼吸のトレーニングも効果的です。まず、口を閉じて鼻だけで呼吸することを意識します。日中、気づいたときに口が開いていないか確認し、開いていたら閉じる習慣をつけましょう。
「あいうべ体操」という口腔機能を高める体操があります。「あー」「いー」「うー」「べー」と大きく口を動かし、舌を出す体操で、口周りの筋肉を鍛えることができます。1日30回程度を目安に行うと効果的です。
舌の位置を正しく保つトレーニングも重要です。舌の先を上の前歯の少し後ろの歯茎に軽く当て、舌全体を上顎につけるようにします。この位置を「スポットポジション」といい、正しい舌の位置です。
睡眠時の口呼吸対策として、口に貼る専用のテープを使用する方法もあります。ただし、鼻が完全に詰まっている状態で使用するのは危険なので、必ず鼻呼吸ができる状態で使用してください。
子どもの場合は、よく噛んで食べることを習慣づけることも大切です。硬めの食材を取り入れ、しっかり噛むことで口周りの筋肉が鍛えられます。
その他の歯並びを悪くするクセ
指しゃぶりや口呼吸以外にも、歯並びを悪くするクセがあります。
頬杖をつくクセは、顎に持続的な力が加わり、歯並びや顎の成長に悪影響を及ぼします。うつぶせ寝も同様に、顔や顎に圧力がかかるため避けた方が良いでしょう。
舌で歯を押すクセ、爪を噛むクセ、唇を噛むクセなども、歯並びに影響します。これらのクセに気づいたら、早めに改善することが大切です。
まとめ
指しゃぶりや口呼吸は、歯並びや顎の発育に深刻な影響を及ぼすクセです。特に成長期の子どもにとっては、将来の歯並びを左右する重要な問題です。指しゃぶりは3歳頃までに自然に卒業できるようサポートし、口呼吸は原因を特定して適切に治療することが大切です。これらのクセに気づいたら、早めに小児歯科や矯正歯科に相談することをおすすめします。日常の何気ないクセを見直すことで、美しい歯並びと健康な口腔環境を守ることができます。
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