歯医者で使われる「フッ素」の種類と違い
歯医者で使われる「フッ素」の種類と違い

はじめに
歯科医院で「フッ素塗布をしましょう」と勧められたことがある方は多いのではないでしょうか。フッ素は虫歯予防に効果的な成分として広く知られていますが、実は歯科医院で使用されるフッ素にはいくつかの種類があり、それぞれ特徴や効果が異なります。また、市販の歯磨き粉に含まれるフッ素と、歯科医院で使用されるフッ素にも違いがあります。この記事では、フッ素の種類とその違い、それぞれの特徴について詳しく解説していきます。
フッ素とは
フッ素は自然界に広く存在する元素で、お茶や魚介類、海藻などの食品にも含まれています。歯科医療において、フッ素は虫歯予防の重要な役割を果たしてきました。フッ素には、歯の再石灰化を促進する効果、歯質を強化する効果、虫歯菌の活動を抑制する効果という三つの主要な働きがあります。
歯の表面のエナメル質は、日常的に脱灰と再石灰化を繰り返しています。酸性の飲食物や虫歯菌が作る酸によってミネラルが溶け出す現象を脱灰といい、唾液の働きによってミネラルが戻る現象を再石灰化といいます。フッ素はこの再石灰化を促進し、さらにフルオロアパタイトという酸に強い結晶を形成することで、歯を虫歯から守ります。
歯科医院で使用されるフッ素の種類
歯科医院で使用されるフッ素製剤には、主に三つの種類があります。それぞれ特性が異なり、患者さんの年齢や口腔内の状態、虫歯のリスクに応じて使い分けられています。
フッ化ナトリウム
フッ化ナトリウムは、歯科医院で最も一般的に使用されているフッ素製剤です。中性のため歯や歯肉への刺激が少なく、味も比較的良好なため、子どもから大人まで幅広く使用できます。フッ素濃度は通常9000ppmから20000ppm程度で、市販の歯磨き粉に含まれるフッ素濃度の6倍から13倍以上の高濃度です。
フッ化ナトリウムは塗布後すぐに効果を発揮し、歯の表面に素早く取り込まれます。ジェルタイプやフォームタイプ、ペーストタイプなど、さまざまな形状があり、患者さんの状況に応じて選択されます。特に乳幼児や学童期の子どもの虫歯予防に広く使用されており、定期的な塗布が推奨されています。
フッ化第一スズ
フッ化第一スズは、フッ素イオンとスズイオンの両方を含む製剤です。フッ素による虫歯予防効果に加えて、スズイオンによる抗菌作用があるのが特徴です。歯周病菌に対しても効果があるため、歯周病のリスクが高い患者さんや、すでに歯周病を発症している方に適しています。
また、知覚過敏の症状を軽減する効果も報告されており、冷たいものがしみる方への治療にも使用されます。ただし、スズイオンの影響で歯や歯肉に一時的な着色が起こることがあります。この着色は健康上の問題はなく、歯科医院でのクリーニングで除去できますが、審美的な面を気にする方には注意が必要です。
酸性フッ素リン酸溶液(APF)
酸性フッ素リン酸溶液は、その名の通り酸性のフッ素製剤です。pHが3から4程度の酸性であるため、歯の表面のエナメル質をわずかに溶かしながらフッ素を取り込ませることができます。この作用により、中性のフッ素製剤よりも深くフッ素が浸透し、より強固なフルオロアパタイトを形成できるという利点があります。
特に虫歯のリスクが高い方や、すでに初期虫歯がある方に効果的です。ただし、酸性であるため、セラミックやポーセレンなどの修復物がある場合は表面を傷める可能性があり、使用を避けることがあります。また、歯肉への刺激も他の製剤より強いため、使用には注意が必要です。
市販品と歯科医院用の違い
歯磨き粉やマウスウォッシュなど、市販のフッ素配合製品も数多くあります。これらと歯科医院で使用されるフッ素製剤の最も大きな違いは、フッ素の濃度です。
日本では、市販の歯磨き粉に配合できるフッ素濃度の上限は1500ppmと定められています。一方、歯科医院で使用されるフッ素製剤は9000ppmから20000ppm以上と、はるかに高濃度です。この濃度の違いにより、歯科医院でのフッ素塗布は、より強力で即効性のある虫歯予防効果が期待できます。
また、市販品は毎日の使用を前提としているため、低濃度で安全性を重視した設計になっています。対して歯科医院でのフッ素塗布は、専門家の管理のもとで数ヶ月に一度行われるため、高濃度でも安全に使用できます。
ただし、市販品の効果が低いというわけではありません。毎日継続して使用することで、着実に虫歯予防効果を得ることができます。理想的なのは、毎日の歯磨きで市販のフッ素配合歯磨き粉を使用し、定期的に歯科医院で高濃度フッ素の塗布を受けるという組み合わせです。
フッ素塗布の方法
歯科医院でのフッ素塗布には、いくつかの方法があります。
トレー法
患者さんの歯列に合わせたトレーにフッ素ジェルを入れ、数分間装着する方法です。歯全体に均一にフッ素を塗布できる利点があります。特に子どもの場合、この方法が多く採用されています。
綿球塗布法
綿球やブラシを使って、歯の表面に直接フッ素を塗布する方法です。手軽で時間もかからず、特定の歯に集中的にフッ素を塗布したい場合に適しています。
イオン導入法
弱い電流を利用して、フッ素イオンを歯の深部まで浸透させる方法です。知覚過敏の治療などに効果的ですが、特殊な装置が必要となります。
フッ素塗布の頻度と効果
フッ素塗布の効果を最大限に引き出すためには、定期的な塗布が重要です。一般的には、3ヶ月から6ヶ月に一度の塗布が推奨されています。虫歯のリスクが高い方や、乳幼児の場合は、より頻繁な塗布が必要になることもあります。
フッ素塗布による虫歯予防効果は、多くの研究で実証されています。定期的にフッ素塗布を受けている子どもは、受けていない子どもと比較して、虫歯の発生率が20パーセントから40パーセント低下するという報告もあります。
ただし、フッ素塗布は万能ではありません。毎日の適切な歯磨き、バランスの取れた食生活、定期的な歯科検診と組み合わせることで、初めて効果的な虫歯予防が実現します。
フッ素の安全性
フッ素の安全性について心配する方もいるかもしれません。歯科医院で適切に使用される限り、フッ素は非常に安全な物質です。ただし、過剰摂取には注意が必要です。
幼少期に過剰なフッ素を継続的に摂取すると、歯のフッ素症という状態になることがあります。これは歯の表面に白い斑点や変色が現れる症状です。しかし、歯科医院での定期的なフッ素塗布や、適切な量の歯磨き粉の使用では、フッ素症のリスクはほとんどありません。
子どもが歯磨き粉を飲み込まないよう注意することや、6歳未満の子どもには年齢に応じた適量の歯磨き粉を使用することが大切です。
まとめ
歯科医院で使用されるフッ素には、フッ化ナトリウム、フッ化第一スズ、酸性フッ素リン酸溶液という主な種類があり、それぞれ特徴や適応が異なります。歯科医師は、患者さんの年齢、虫歯のリスク、口腔内の状態を総合的に判断して、最適なフッ素製剤を選択しています。
市販品と歯科医院用のフッ素製剤は濃度が大きく異なり、それぞれに役割があります。毎日の歯磨きで市販のフッ素配合歯磨き粉を使用し、定期的に歯科医院で高濃度フッ素塗布を受けることが、効果的な虫歯予防につながります。
フッ素は適切に使用すれば安全で効果的な虫歯予防手段です。定期的な歯科検診の際に、自分に合ったフッ素塗布について歯科医師に相談してみてはいかがでしょうか。
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