親知らずの抜歯は必要?判断基準と知っておくべきポイント
はじめに

「親知らずは抜いた方がいいの?」多くの方が一度は抱く疑問です。歯科医師に抜歯を勧められたけれど、本当に必要なのか迷う、痛みがないのに抜く必要があるのか分からない、という声をよく聞きます。実は、全ての親知らずを抜く必要はありません。正常に生えており、問題を起こしていない親知らずは、抜歯する必要がないケースもあります。一方で、放置すると深刻なトラブルを引き起こす親知らずもあり、早めの抜歯が推奨されることもあります。本記事では、親知らずの抜歯が必要かどうかの判断基準、抜歯を勧められるケース、抜かなくても良いケース、そして判断に迷ったときの考え方について詳しく解説します。
親知らずとは
親知らずは、正式には第三大臼歯と呼ばれ、前から数えて8番目の歯です。上下左右に1本ずつ、計4本あります。
多くの人では、17歳から25歳頃に生えてきます。親が知る頃には生える年齢になっているという意味で、親知らずと呼ばれます。
現代人は顎が小さくなっており、親知らずが生えるスペースが不足していることが多いです。そのため、正常に生えず、横向きや斜めに生えたり、歯茎に埋まったままだったりすることがよくあります。
また、親知らずが4本とも生える人もいれば、一部だけの人、全く生えない人もいます。生まれつき親知らずの芽(歯胚)がない人も約30パーセント程度いるとされています。
抜歯が必要なケース
以下のような場合は、親知らずの抜歯が強く推奨されます。
第一に、痛みや腫れを繰り返す場合です。親知らずが斜めや横向きに生えていると、歯茎との間に隙間ができます。この隙間に食べかすや細菌が溜まり、炎症を起こします。これを智歯周囲炎といいます。一度炎症が起こると、繰り返しやすくなります。
第二に、隣の歯に悪影響を与えている場合です。親知らずが隣の歯(第二大臼歯)を押すように生えていると、隣の歯が虫歯になったり、歯根が溶けたりすることがあります。また、歯並びが悪くなることもあります。
第三に、親知らず自体が虫歯になっている場合です。奥にあり歯ブラシが届きにくいため、親知らずは虫歯になりやすいです。治療が困難な位置にあることも多く、抜歯が選択されます。
第四に、嚢胞や腫瘍ができている場合です。埋まったままの親知らずの周囲に、嚢胞(液体の入った袋)や腫瘍ができることがあります。これらは顎の骨を溶かす恐れがあり、摘出が必要です。
第五に、歯並びの矯正治療のために必要な場合です。矯正治療では、歯を動かすスペースを作るために、親知らずを抜くことがあります。
第六に、親知らずが上下で噛み合っておらず、伸びてきて頬や歯茎を傷つける場合です。対になる歯がないと、親知らずは伸び続け、噛むたびに粘膜を傷つけることがあります。
抜かなくても良いケース
一方、以下のような場合は、抜歯の必要がないこともあります。
第一に、まっすぐ正常に生えており、上下でしっかり噛み合っている場合です。このような親知らずは、他の歯と同様に機能しており、問題を起こしません。
第二に、完全に骨の中に埋まっており、今後も生えてくる兆候がない場合です。症状もなく、隣の歯にも影響していなければ、経過観察で良いこともあります。ただし、定期的なレントゲンチェックは必要です。
第三に、きちんと歯磨きができており、虫歯や歯周病のリスクが低い場合です。親知らずまでしっかりケアできていれば、無理に抜く必要はありません。
ただし、将来的に問題を起こす可能性がある場合は、予防的に抜歯を勧められることもあります。特に、若いうちに抜いた方が、骨が柔らかく回復も早いため、推奨されることがあります。
予防的抜歯について
現在は問題がなくても、将来的にトラブルを起こす可能性が高い親知らずは、予防的に抜歯を勧められることがあります。
横向きや斜めに生えており、いずれ隣の歯に悪影響を与える可能性が高い場合、若いうちに抜歯することが推奨されます。年齢が上がると、骨が硬くなり抜歯が困難になります。また、回復にも時間がかかります。
妊娠を予定している女性にも、予防的抜歯が勧められることがあります。妊娠中はホルモンの影響で歯茎が腫れやすく、親知らずの炎症が起こりやすくなります。しかし、妊娠中は抜歯ができる時期が限られるため、妊娠前に抜いておく方が安全です。
海外赴任や留学を控えている方も、事前に抜歯を検討すべきです。現地で親知らずのトラブルが起こると、言葉や医療システムの違いで困難を伴います。
抜歯のタイミング
抜歯が必要と判断された場合、いつ抜くべきでしょうか。
痛みや腫れがある急性炎症の状態では、すぐには抜歯できません。まず抗生物質や消炎剤で炎症を抑え、落ち着いてから抜歯します。炎症があるときに抜くと、感染が広がったり、麻酔が効きにくかったりするためです。
理想的なタイミングは、10代後半から20代前半です。この時期は骨が柔らかく、歯根も完全に形成されていないことが多いため、抜歯が比較的容易で、回復も早いです。
仕事や学業の都合も考慮します。抜歯後、数日間は腫れや痛みが出ることがあるため、長期休暇の前などが適しています。
女性の場合、生理中は避けた方が良いとされています。出血が止まりにくい、体調が悪いなどの理由からです。
抜歯のリスクと合併症
親知らずの抜歯には、リスクや合併症も存在します。
下の親知らずの根の近くには、下歯槽神経という太い神経が通っています。抜歯時にこの神経を傷つけると、下唇や顎の感覚が鈍くなることがあります。多くは数ヶ月で回復しますが、まれに永久的に残ることもあります。
また、上の親知らずの根の近くには、上顎洞という鼻の空洞があります。抜歯時に上顎洞に穴が開く(口腔上顎洞瘻)ことがあります。通常は自然に閉じますが、場合によっては追加の処置が必要です。
抜歯後の出血、腫れ、痛みは一般的な症状です。通常は数日から1週間で治まります。
ドライソケットという合併症もあります。抜歯後の穴に血餅ができず、骨が露出して激しい痛みが続く状態です。喫煙者や、抜歯後の注意を守らなかった場合に起こりやすいです。
これらのリスクは、歯科医師が事前に評価し、説明します。リスクが高い場合は、大学病院や口腔外科専門医を紹介されることもあります。
セカンドオピニオンの活用
抜歯を勧められたけれど迷う場合は、セカンドオピニオンを求めることも一つの方法です。
別の歯科医師に診てもらい、意見を聞くことで、判断材料が増えます。歯科医師により見解が異なることもあり、複数の意見を参考にすることは有益です。
ただし、複数の歯科医師が抜歯を勧める場合は、その必要性が高いと考えられます。
レントゲン画像やCT画像を持参すると、スムーズに診察してもらえます。前の歯科医院に依頼すれば、画像をもらえることが多いです。
抜歯を避けたい場合の対処法
どうしても抜歯を避けたい場合、できることはあるでしょうか。
まず、徹底的な口腔ケアです。親知らずまでしっかり磨き、虫歯や炎症を防ぎます。歯ブラシだけでなく、タフトブラシ(先の細い歯ブラシ)を使うと、奥まで届きやすいです。
定期的な歯科検診とクリーニングも重要です。3ヶ月から6ヶ月に一度、プロによるチェックとクリーニングを受けましょう。
ただし、構造的に問題がある親知らず(横向き、埋まっているなど)は、どんなにケアしても限界があります。最終的には抜歯が必要になることも理解しておきましょう。
抜歯後のケア
抜歯を決断した場合、術後のケアも重要です。
抜歯当日は、激しい運動、長時間の入浴、飲酒を避けます。血行が良くなると、出血や腫れが増すためです。
処方された薬は、指示通りに服用します。抗生物質は、症状が改善しても最後まで飲み切ることが重要です。
患部を舌や指で触らないようにします。血餅が取れると、ドライソケットになる恐れがあります。
うがいは優しく行います。強くうがいすると、血餅が流れてしまいます。
喫煙は絶対に避けます。喫煙は治癒を大幅に遅らせます。
柔らかい食事を取り、患部で噛まないようにします。
通常、1週間から2週間で抜糸があり、その後は徐々に通常の生活に戻れます。
まとめ
親知らずの抜歯が必要かどうかは、生え方、症状の有無、将来的なリスクなどを総合的に判断します。痛みや腫れを繰り返す、隣の歯に悪影響がある、虫歯になっているなどの場合は、抜歯が強く推奨されます。
一方、まっすぐ生えて問題がない場合は、抜く必要はありません。判断に迷う場合は、歯科医師とよく相談し、必要に応じてセカンドオピニオンも活用しましょう。
自分の親知らずの状態を正確に把握し、適切な判断をすることが大切です。
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